お問い合わせフォームなのに、お問い合わせが来ない
弊社のサイトにも「お問い合わせフォーム」を設置していますが、ここ数か月、届く内容の顔ぶれが変わってきました。以前は月10件に満たない程度だったフォーム経由の連絡が、6月以降は月15〜25件ほどに増え、その状態が3か月続いています。
件数だけ見れば「お問い合わせが増えた」ように見えます。ですが、実際に開いてみると、直近1か月に届いた分はほぼすべてが自社サービスの営業メールで、本来の意味での「相談」は見当たりませんでした。フォームは、見込み客との接点である以上に、営業メールの送りつけ先として使われ始めています。
届いている営業メールの中身
内容はさまざまですが、大きく分けるとこのあたりのパターンに整理できます。
Web制作・コーディングの外注営業
「制作実務を外に任せませんか」という、同業者からの下請け提案。
紹介ビジネス・アフィリエイト案件
保険相談や各種紹介の専用URLを配るだけで報酬が発生する、という仕組みの案内。
雑誌・広告掲載の営業
全国誌への企業紹介掲載など、広告代理店からの企画提案。
AI再販・OEM系の勧誘
「自社ブランドでAI事業を始められる」というOEM/代理店募集。
営業リスト・テレアポ代行
成果報酬型のアポ獲得代行やリスト販売の案内。
人材紹介・インターン紹介
学生インターンや海外人材の紹介サービスの案内。
備品・事務用品の通販案内
オフィス用品通販サービスの新規登録の案内。
「サイトを改善しませんか」型
具体的な指摘なしに「伸びしろがある」とだけ述べるコールドピッチ。
いずれも違法なものではなく、まっとうな営業活動の範囲です。問題は内容そのものより、「相談窓口」であるはずのフォームが、一方的な営業メールの送付先として使われている点にあります。
なぜ「AIが書いた」と感じるのか
文面を並べて読むと、いくつか共通する特徴があります。
1. 自社サイトの内容を的確に言い当ててくる
「中小企業向けのAI導入支援や生成AIを活用した受託開発を展開されていると拝見し」のように、こちらの事業内容を正確に要約した書き出しから始まるメールが複数ありました。営業リストを人力で読み込んで一件ずつ書いているとは考えにくいスピードと件数で届いており、サイトの内容を自動で読み取り、宛先ごとに冒頭だけを差し替える仕組みが動いていると見るのが自然です。
2. 同じ送信元から、少しずつ数字を変えた文面が繰り返し届く
同じ会社・同じサービスの案内が、日を空けてほぼ同文で複数回届くことがありました。よく見ると「成果報酬10〜15万円」だった条件が、次に届いた回では「12〜20万円」に変わっているなど、細部だけが機械的に入れ替わっています。人が一件ずつ書き直しているというより、テンプレートに変数を差し込んで生成・送信している状態に近い動きです。
3. あえて「フォーム経由」で届く
これらは通常の受信箱に直接届くのではなく、サイトのお問い合わせフォームを経由して送られてきます。フォーム送信は「サイト運営者への正規の連絡」として届くため、迷惑メールフィルタで弾かれにくく、開封率も高くなりやすい送り方です。一斉配信メールには配信停止対応など運用上の負担がありますが、フォーム投稿はその外側にあるため、営業チャネルとして選ばれやすいのだと考えられます。
振り回されないために、どう向き合うか
こうした営業メールを完全になくすことは難しい前提で、実務上は「時間を取られすぎない仕組み」を作ることが現実的です。
- 文面の丁寧さと、内容の具体性は別物と考える。冒頭がどれだけ的確でも、提案の中身が自社の課題への言及ではなく自社サービスの一般的な説明であれば、こちらの状況を踏まえた提案ではない可能性が高いです。
- 送信元と名乗っている会社が一致しているか確認する。差出人アドレスのドメインと、本文中の会社名・署名が食い違っていないかは、最初に見るポイントです。
- すべてに個別対応しようとしない。件名や送信元のパターンがある程度見えてきたら、一次仕分けのルールを先に作ってしまい、「一度は目を通す必要があるもの」だけを残す方が、結果として本来の問い合わせを見落としにくくなります。
皮肉なことに、この「フォーム営業の急増」を生んでいるのも、それに対応するために有効なのも、どちらもAIです。弊社では日々のメール仕分けにも自動化ルールを取り入れており、こうした運用の実例は業務改善のご相談の中でも具体的にお伝えできます。
※ 本稿は、弊社のお問い合わせフォームに実際に届いたメールの内容をもとに、傾向を分析・一般化してまとめたものです。特定の送信企業・個人を批判・特定する意図はなく、本文中に実際の会社名・氏名・連絡先は記載していません。「AIによって生成・送信されている」との評価は、文面の特徴から推測したものであり、送信者側の実際の運用方法を確認したものではありません。